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外国人雇用における給与計算担当者としてのチェックポイント

  • 投稿日:2018/11/12
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    よくある質問

人口減少や高齢化が進む日本でどの企業にとっても労働力の確保は急務の課題ではないでしょうか?
最近では黒字経営にも関わらず、人手不足倒産といったニュースまで目にします。
会社が倒産してしまえば私たちの生活も不安になりますし、倒産までいかなくても人手が足りなければ、1人当たりの業務量が増加し、ワークライフバランスなどと言っていられなくなりますので他人ごとではないように思います。
そこで注目されているのが、外国人労働者です。
身近なところではスーパーのレジやコンビニで当たり前のように外国人労働者を見かけます。先日私が行った飲食店の店員さんも国際色豊かで、むしろ日本人の従業員は一人も見かけませんでした。
外国人の労働力をいち早く取り入れないと企業はこの先、生き残っていけないかもしれませんね。
ということで今回は外国人労働者を雇用した際の給与計算についていくつかチェックポイントをご紹介したいと思います。

   
 
◆給与額は総支給額と手取り額を説明しておく◆
初めて社会人になった時、給料日に銀行に振り込まれた金額が思っていたより安いという事がありますよね。
日本では給料から社会保険料や所得税などは天引きされるシステムがあります。
日本人であれば広く一般に理解されている制度ですが、外国人にとっては、そのようなシステム自体聞いたことがない方もいらっしゃいます。
トラブルの元になりかねないので、事前に総支給額と手取り額、控除されるものがあることを明確に説明しておく必要がありそうですね。
 
◆外国人労働者にも最低賃金の適用がある◆
外国人だから安い賃金で働いてもらおうと考えてはいけません。日本人労働者同様に最低賃金の適用がありますので、違反すれば最低賃金額との差額を支払わなくてはなりませんし、支払わない場合は罰金などが定められていますので注意してください。
特に給与額を月額で取り決めている場合は、必ず時給換算して最低賃金を下回っていないかの確認が必要ですね。
 
◆外国人労働者の源泉所得税◆
外国人労働者の源泉所得税は、その労働者が居住者か非居住者かどちらに該当するのかによって課税される税率が変わってきます。
 

居住者と非居住者の課税の違い

居住者に該当すれば、日本人と同じように給与所得の源泉徴収税額表より所得税を徴収し、年末調整も行います。
 
非居住者に該当すれば、原則として20.42%の税率で源泉徴収して終わりです。
年末調整のように過不足精算は行いません。
ただし、日本との間で租税条約を結んでいる国から来ている外国人については、租税条約に関する届出書を提出することによって軽減または免税されることがあります。
  【居住者と非居住者の区分】
所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
 「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。
 したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。
 ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。
 「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。
 法人については、本店所在地がどこにあるかにより、内国法人又は外国法人の判定が行われます(これを一般に「本店所在地主義」といいます。)
⇒国税庁HPより
 
つまり日本に1年以上住所を有して居住していれば『居住者』で1年未満であれば『非居住者』ということになりますね。

 
 
◆日本国外に住む親族を配偶者控除の対象とする場合◆
 平成28年分以後の年分の所得税の確定申告において、非居住者である親族(以下「国外居住親族」といいます。) に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける場合は、親族関係書類及び送金関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示しなければなりません。
 また、平成28年分以後の年分の給与等の源泉徴収及び年末調整において、国外居住親族に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除の適用を受ける場合には、給与等の源泉徴収において、その適用を受ける旨を扶養控除等申告書等に記載した上で、その申告書等に親族関係書類を添付して源泉徴収義務者に提出するか、又はその申告書等の提出の際に提示し、さらに、給与等の年末調整において、送金関係書類を扶養控除等申告書等に添付するか、提示しなければなりません。
 同様に、国外居住親族に係る配偶者特別控除の適用を受ける場合には、配偶者特別控除申告書にその旨を記載した上で、その申告書に親族関係書類及び送金関係書類を添付して源泉徴収義務者に提出するか、又はその申告書の提出の際に提示しなければなりません。
 
(注1) 「親族関係書類」とは、次の 又は のいずれかの書類(外国語で作成されている場合にはその翻訳文も必要です。)で、その国外居住親族がその納税者の親族であることを証するものをいいます。
 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及びその国外居住親族の旅券の写し
 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(その国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
 
(注2) 「送金関係書類」とは、その年における次の 又は の書類(外国語で作成されている場合にはその翻訳文も必要です。) で、その国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
①金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引によりその納税者からその国外居住親族に支払いをしたことを明らかにする書類
②いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、そのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等及びその商品等の購入等の代金に相当する額をその納税者から受領したことを明らかにする書類
⇒国税庁HPより
つまり日本国外に居住している配偶者や扶養親族も、定められた書類を提出すれば控除の適用を受けることができるということです。給与担当者は外国人労働者から扶養控除申告書が提出された際には、書類のチェックや適正な処理ができるように心がけておく必要がありますね。
 
 
 
◆外国人労働者の住民税◆
外国人労働者が、その年の1月1日までに1年以上日本に住所がある、もしくは居住者の区分に該当する場合は日本人と同様に住民税を納税する必要があります。住民税は前年度所得を基に計算させるので、新たに日本へ入国した年には住民税の支払いはありません。また日本に1年未満しか滞在しない場合は非居住者の区分に該当しますので非課税となり住民税を払う必要はありません。
 
◆外国人労働者の社会保険◆
事業所が社会保険の適用事業所であれば、外国人労働者にも健康保険・厚生年金等に加入させる必要があります。保険料については日本人労働者と同様に給与額の等級に応じて徴収することになります。
 
◆厚生年金の脱退一時金◆
外国人労働者が本国へ帰国する際、これまで掛けていた厚生年金が掛け捨てにならないように脱退一時金を支給する制度があります。
 
支給要件は以下のとおりです。
・厚生年金保険、共済組合等の加入期間が6か月以上あること
・日本国籍を有しない方であること
・老齢厚生年金などの年金の受給権を満たしていないこと
・年金(障害手当金を含む)を受ける権利を有したことのない方
 
請求は被保険者資格を喪失し、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求する必要があります。
 
◆外国人労働者の雇用保険・労災保険◆
こちらも日本人従業員同様に加入させる必要があります。
 
 
以上、ほとんどが日本人労働者と変わらない給与計算方法となりますが、区分や提出書類等の理解など給与担当者として知識を持っておくことが必要ですね。
そして外国人労働者に制度の理解をしてもらうために、説明できるスキルも身に着けることが今後は必要になってくるかもしれません。
 
※2018年11月現在の情報です。